まず、重要なのは、ワークライフバランスには個人差があるということです。自分にとって正しいバランスであっても、身近な同僚はバランスを崩しているかもしれません。従来のワークライフバランスの定義といえば、個人の生活における個人的な活動と仕事との優先順位や、仕事に関する活動が家庭内にどの程度存在するかを指します。
この数年、ワーク・ライフ・バランスへの注目が高まっています。現代のテクノロジーのおかげで、ワーカーがいつでもどこでも働くことを容易になり、仕事とプライベートの区別は曖昧になりました。在宅勤務が一般的になり、多くのワーカーのワークライフバランスに良い影響を与えていることが明らかになっています。
ワークライフバランスは単なる幻想でしょうか?
2018年、デンマークの哲学者であり実業家でもあるMorten Albækは"One Life: How we forgot to live meaningful lives"を出版し、バランスを取ることがますます難しくなっていることを指摘しました。Morten Albæk氏は、いわゆるワークライフバランスを求め、自分を仕事人間、余暇人間、家族人間という風に分けられると考えるのは錯覚だといいます。私たちは一人の人間であり、人生は一度きりであり、使える時間はどのように管理しても同じだと述べています。つまり、ワークライフバランスとは、「人」をひとつにまとめ、それぞれの要素が他の要素に影響することを受け入れることだというのです。
Albæk氏の考えには一理ありますが、ガートナー社の調査によると、アメリカのワーカーは、雇用主が提供する健康手当よりも、ワークライフバランスの良さを重視していることが明らかになっています。実際、72%のワーカー が転職活動においてワークライフバランスが非常に重要だと考えています。このことは、充実した医療制度だけで労働者を確保できると考えている企業にとって、警鐘を鳴らすものであるはずです。
ワークライフバランスの影響
ワークライフバランスを語るとき、いくつかの要素が絡んできます。まず、ハイブリッドワークプレイスには柔軟性が非常に重要です。在宅勤務しているアメリカのワーカーの73%は、職場で勤務していたときよりもワークライフバランスがとれていると回答しています。その理由のトップは「家族と過ごす時間が増えた」でした。さらに、在宅勤務はプライベートと仕事の両立を可能にするという意見もありました。中断が少なく、集中できる時間、静かな職場環境などのおかげで、生産性が向上します。
ワークライフバランスのもう一つの重要な要素は、働きながら健康を維持することです。ワークライフバランスが悪く、長時間オフィスにいると、健康に悪い影響を及ぼします。また、仕事中の人間工学的な配慮も必要です。仕事をする時の姿勢が原因で痛みを感じると、その不快感が私生活にも影響を及ぼす可能性が高くなります。悪い姿勢をとったり、姿勢を全く変えないなどで、体に負担をかけないように気をつけましょう。オフィスワーカーにとって、在宅勤務でもオフィス勤務でも、昇降デスクは大きな違いをもたらします。
国境を越えたワークライフバランス
世界を見渡すと、日々のワークライフバランスに対する満足度には大きな差があります。オランダのワーカーはワークライフバランスの達人で、OECDの「より良い暮らし指標」(Better Life Index: BLI)で10点満点中9.5点という素晴らしいスコアを獲得しています。次点はイタリア、3位はデンマークで10点満点中9点です。一方、アメリカ人の60%がワークライフバランスが悪いと答えていますが、その原因のほとんどは仕事と家庭生活の境界がないことです。この結果、アメリカのワーカーは、調査対象国の中でワークライフバランスが最も悪い12位となっています。
優れたワークライフバランスを実現する方法
冒頭で述べたように、仕事と家庭を分けるのは難しいし、不可能かもしれません。また、その複雑さは、仕事の種類によって大きく異なることは間違いありません。しかし、人生のバランスをとるために、できることがいくつかあります。
- 最初に、一度にすべてを達成できないことを認める必要があります。日常生活の中でバランスを取るために、いくつかの選択をしなければならないでしょう。
- 上司や同僚と話し合い、期待値を一致させましょう。仕事をするときとしないときの境界線を決めておきましょう。これは、営業時間外のメールや電話への対応、休日や病気による休みの時などです。
- パートナーがいる場合は、お互いの仕事やリソースを尊重した上で、どのように自分を調整していくかを話し合うことが大切です。お互いが納得できる共通項を見つけるとよいでしょう。そうすることで、日常生活のあらゆる実用的なことを解決するための良い習慣を一緒に身につけることができるのです。
- 自分の時間、自分の趣味の時間を作りましょう。
- ぐっすり眠るようにしましょう。
- 家にいるときでも「オフィスから出て歩く」ことができるように、ホームオフィスは他の場所から離れた場所に構えましょう。
- また、自分がリラックスして働けるようなオフィス環境を整え、日中も作業姿勢を変えられるようにしましょう。健康的な働き方の重要性についてはこちらをご覧ください 。